健康ガイド
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猫のFIPは治る時代へ:最新の治療法
時間:2025-09-01 15:12:35閲覧数:

はじめに

かつて“死の病”と恐れられていた猫伝染性腹膜炎(FIP)は、近年の抗ウイルス薬の進化により、“治療可能な時代”へと変わってきました。本記事では、最新の治療法や臨床データを専門的かつ分かりやすく解説し、FIP治療の現状と展望をお伝えします。

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1. FIP治療が可能になった背景

従来のFIP治療は対症療法や免疫抑制剤に頼るものが中心でしたが、決定的な治療法は存在しませんでした。ところが、開発された抗ウイルス薬「GS‑441524」が好成績を示し、FIPを根本的に制圧する可能性が広がりました。この薬はRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する作用を持ち、ウイルス複製を抑制します。多くの臨床試験で高い治癒率が報告されたことで、FIPを治療できる段階に来ています。


2. GS‑441524(NeoFipronis®)の投与プロトコル

  • 投与開始:初期段階は体重1kgあたり15mgを1日1回、投与します。

  • 神経型・眼型対応:眼症状や神経症状が出ている場合は、20〜30mg/kgへ調整すると効果が改善します。

  • 治療期間:最低12週間の連続投与が基本ですが、症状の重症度に応じて16週間に延長されることもあります。症状が完全になくなった後、さらに2週間の維持投与を推奨する場合があります。

  • 投与方法:主に経口投与。薬剤耐性の懸念や注射によるストレスが軽減され、猫への負担が少ないのが特徴です。


3. 臨床成績と治療成功率

多数の臨床研究により、GS‑441524を用いたFIP治療では、治癒率80~90%以上という極めて高い成功率が報告されています。湿性FIPだけでなく、神経型・眼型といった難治症例でも、早期介入と適切な投与により予後が改善されています。


4. 注意点と副作用管理

GS‑441524は副作用が比較的少ないとされていますが、

  • 一時的な食欲低下や軽度の下痢、

  • 軽度の肝酵素上昇 などが報告されています。

    そのため、定期的な血液検査(肝腎機能)や体重管理が必要です。投与中に異変が見られた場合は速やかに獣医師へ相談を。


5. 新たな治療展開:他薬との併用や二次治療選択肢

  • モルヌピラビル(Molnupiravir):GS‑441524と併用されることもあり、耐性リスクへの対応や再発時の二次療法として注目されます。

  • プロテアーゼ阻害剤(GC‑376など):注射薬として使用例があり、初期研究では有望ですが現在は少数例のみです。


6. 治療後のフォローアップと生活サポート

FIPが治った後も、栄養管理や免疫強化、定期検診が大切です。ストレス回避や適切な栄養、健康モニタリングを継続し、猫のQOL向上に配慮した生活環境を整えましょう。


まとめ

かつて不治の病であったFIPも、GS‑441524という画期的な治療薬によって「治療可能な時代」に突入しました。早期発見と適切な投与により、多くの猫が健康を取り戻しています。正しい知識と早い対応が、猫と飼い主にとっての希望となるでしょう。